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うつ病の治療

​うつ病の原因は複数あります。大まかに言えば、生物学的な要因、心理学的な要因、社会的な要因が合わさって、うつ病を引き起こします。したがって、うつ病の治療にも多くの選択肢があります。薬、心理学的な治療・ケア、社会的なサポートなどを組み合わせて、うつ病を治療します。

処方薬

​薬物療法

うつ病の薬を抗うつ薬と呼びます。抗うつ薬には以下のものがあります。

  • ボルチオキセチン:眠気が出にくいタイプの抗うつ薬です。

  • セロトニン選択的再取り込み阻害薬(SSRI):SSRIにはセルトラリン、エスシタロプラム、パロキセチン、フルボキサミンなどがあります。SSRIはセロトニンを増やすことで、脳に作用してうつ病を治療します。初期に吐き気や下痢が出ることがありますが、多くの場合、1週間ほどで改善します。また眠気がでることもあります。

  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):SNRIには、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプランなどがあります。デュロキセチンは痛みを緩和させる作用も持ちます。SNRIはセロトニンとノルアドレナリンを増やすことで、脳に作用してうつ病を治します。副作用はSSRIとほぼ同様です。

  • ミルタザピン:セロトニンやノルアドレナリンに作用しますが、吐き気などの胃腸症状の副作用が出にくいです。眠気が出やすいタイプで、寝る前に内服します。

  • 三環系・四環系抗うつ薬:古いタイプの抗うつ薬です。効果はSSRIなどとほぼ同じですが、眠気や便秘、口渇などの副作用がが出やすいことが特徴です。

抗うつ薬は効果が出始めるのに2週間ほどかかり、効果が安定するのに1-2ヶ月かかります。投薬初期は効果が無く副作用ばかり出ますが、途中で止めると効果がないので、抗うつ薬を続けることが大事です。また、毎日続けないと効果が出ないため、頓服のように症状のある時だけ時々使うと効果がありません。その他、有効量以下で使用しても効果が出ないので、有効量まで増やすことも大事です。

1-2ヶ月上記の抗うつ薬を使っても効果が乏しい場合は、2種類の薬を併用する増強療法を行うことがあります。増強療法には以下のものがあります。

  • アリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬の併用

  • 炭酸リチウムの併用

  • ​甲状腺ホルモン薬の併用

また、双極性障害(双極性感情障害、双極症、躁うつ病)に伴ううつ病の場合は、以下の薬物療法を行います。

  • 双極性障害にのうつ病相に有効な非定型抗精神病薬(ルラシドン、クエチアピン、オランザピンなど)

  • 気分安定薬または抗てんかん薬(炭酸リチウム、ラモトリギン、バルプロ酸など)

  • 気分安定薬/抗てんかん薬と抗うつ薬の併用

薬物療法
心理学セッション

精神療法
心理カウンセリング

うつ病の状態が比較的軽い場合は、精神・心理療法だけで治療することがあります。また、精神・心理療法と抗うつ薬の併用も可能です。

 

精神科医が行う場合を精神療法、臨床心理士や公認心理師が行う場合を心理カウンセリングと呼ぶことが多いですが、この二つに大きな違いはありません。一般的に、精神科医が行う精神療法は1回5-10分と短時間であるのに対し、臨床心理士や公認心理師が行う心理カウンセリングは30-50分と長時間です。

 

うつ病に対する精神療法/心理カウンセリングには色々なものがありますが、それぞれの方法で効果に大きな差は出ないという研究結果が多く出ています。具体的には、認知行動療法や対人関係療法などが知られていますが、各治療法ともアレンジされ、様々な方法論があります。現実では、各治療者ごとに方法が違うので、自分に合う治療者を探すことが大事です。

精神療法
手をつないで

生活支援
社会的サポート

うつ病の治療では、他者からの支援・サポートがとても大切です。

うつ病になった時は、まず休養を取る必要があります。そのためには、身近な人、家族や友人から生活面のサポートが得られると良いです。サポートする人は、特別な方法を意識する必要はありません。家事を手伝う批判せず見守る等の簡単なサポートだけで十分です。

働いている方の場合は、職場の上司や同僚からの理解が重要です。休職の際は、傷病手当金の申請などの福利厚生についても担当部署から説明を受けて下さい。復職する際は、どうすれば心理的負担を減らして働き続けることができるのか、上司や産業医との話し合いが求められます。

地域の福祉サービスも大事なので、積極的に利用して下さい。住所地の役所に自立支援医療を申請すると、窓口負担が安くなります。また、病状がある程度重い方は、精神障害者保健福祉手帳を申請すると様々な支援を受けることができます。例えば障害者雇用枠での就労も可能です。その他の福祉サービスとして、訪問看護ヘルパー等の在宅サービスもあります。

経済的支援も大切です。生活への支障が大きい場合、精神障害者年金(1年半以上通院した場合)を申請できる可能性があります。働けなくなり、本当にお金に困った場合は、生活保護も選択肢です。こうした経済的支援を受けることをためらう人や恥ずかしいと感じる人もいますが、福祉の利用は正当な権利であり、遠慮する必要はありません。

生活支援
脳のイラストレーション

脳への刺激
TMS・ECT

うつ病は脳の病気です。そのため、直接的に脳を刺激することで、うつ病を治療することができます。ただし、この方法は侵襲性があるので、薬による治療で改善しない場合重症の場合など、少し特殊な場合にのみ行います。

この一つは、電気けいれん療法(ECT)という治療です。頭に電気を流して、てんかん発作(けいれん発作)を引き起こすことで、うつ病を治療します。電気を流す時に強い痛みがありますので、全身麻酔をかけて行います。ECTは効果が高いことが分かっていますが、侵襲的であり、入院しなければ実施できないため、大掛かりで負担の大きな治療と言えます。このため、一般的には、うつ病が非常に重篤な場合や自殺が切迫しているような緊急性の高い場合にECTを実施します。

もう一つの脳を刺激する治療は、経頭蓋磁気刺激(TMS)です。これは、脳に磁気刺激を与えてうつ病を治療する手段です。何度もくり返すため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)と呼ぶこともありますが、TMSとrTMSは同じものです。

TMSは外来通院で実施することができます。TMS施行中に痛みがあり、これが難点です。現在のところ、1種類の抗うつ薬で効果が不十分だった場合、または副作用などで抗うつ薬の継続が困難な場合にTMSを行うことになっており、いきなりTMSを行うことはありません。年齢は18歳以上が適応です。TMSには様々な方法がありますが、日本では、保険が適用される方法と保険が適用されない方法があります。

脳への刺激
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